※新建ハウジングより抜粋
住宅収納スペシャリストの川島マリです。
住宅を購入する世帯主の年齢は、30代が一番多いそうです。
理由は明白で、30代は子どもが生まれて部屋が手狭になる時期ですし、住宅ローンの完済年齢から逆算すると、最長の35年ローンを組むならこの年代に購入しないと定年前に払い終えないからです。
という訳で、ちょうど子育て中に新しい家で暮らすお母さんを悩ませるのが「きれいに暮らしたいのに、子どもが片付けない問題」です。
片付けが苦手なお母さんだけが困っているわけじゃなく、実は片付けが得意なお母さんでも悩んでいます!
仕事柄、わが家の子ども達は片付けが上手できれい好きと思われがちですが、残念なことに全く逆の大人に育ってしまいました。
育った家がきれいに片付いているからといって、子どもがきれい好きになるわけじゃないと実感しています。
ついやってしまう「片付け嫌いにする」子育て
片付け好きのお母さんは、気をつけないと片付けに苦手意識を持つ子どもを育ててしまうかもしれません。
わたしの経験を書きますので、反面教師としてお読みくださいね。
まず、収納のつくり方ですが、使いやすさより見た目の美しさを優先させると、片付けるのに手間がかかる入れ物を使ってしまったり、使う場所と片付ける場所が離れているなど、子どもにとっては面倒な収納になってしまいます。
家づくりやリフォームをお考えの方は、子どもが遊ぶスペースの近くにおもちゃを置ける収納を最初から計画し、子どもでも簡単に戻せるようにしましょう。
次に、声掛けと手直しについて。
スッキリきれいにしておきたいリビングですが、子どもが勉強したり遊んだりと一番長い時間を過ごすため、モノが多く置かれます。
子どもに片付けを任せると、その片付けが気に入らずに雑に置かれた物を後からつい整え直したりしてせっかくのやる気を削いでしまうかも。
何気なくしてしまったことが、子どもを片付け嫌いにした原因のひとつになっているかもしれません。
片付けないと自分でやってしまいがちですが、子どもに優しく声掛けをするのは有効です。
住宅収納スペシャリストとしてお客様の自宅で片付けをするときにはよくこんな声掛けをします。
「〇〇〇をする前に、使ったおもちゃはここへ戻そうね」。
次のことをする前には片付けるという行動を伝え、「どっちが早く戻せるかな」とお母さんにも楽しそうに片付けをやってもらいます。子どもはお母さんのことをよく見ているので、お母さんが楽しそうにしていると一緒にやりたくなります。
また、「片付けて」と言っても小さい子どもは何をしたらいいのかわかりませんので、「これはこのかごへ入れてね」と声をかけます。実際に何をしたらいいのか、どこに何を置くのかわかるように「大好きなおもちゃを選ぼう」「使ったらここに戻そうね」と、やること(行動)を具体的に伝えることが大切です。
自分で片付けたくなる環境をつくる
とはいえ、子どもがみな片付け嫌いなわけではありません。
就学前の子どもでも、楽しそうに手伝ってくれることが度々ありますので、関わり方次第では年齢に関係なくテキパキと集中して決められたところへ戻したり、自分で入れるところを考えて片付けができることを、今になってお客様の家で実感しています(笑)。
・収納場所を決める
モノの戻し場所には、何が入っているかわかるようにラベルを貼りますが、子どもには自分で絵や文字を書くように声をかけます。
シールを選んで貼ってもらうのも楽しいです。
小さいお子さんでも、一緒に収納を作っていくことが大切です。
・おもちゃについて
おもちゃや文房具など、子どもが管理できる量は大人ほど多くありません。
個人差はありますが、目安としては、例え全部のおもちゃを子どもが出して遊んでもお母さんがお子さんと一緒に15分位で片付けられる量にしておくと安心です。
お母さんがうんざりする量では、子どもが自分で片付けるのは到底無理です。
おもちゃの量が多すぎていないか、見直してみましょう。
毎日のように「よく遊ぶおもちゃ」、思い出して「時々遊ぶおもちゃ」、買ったけれど「使っていないおもちゃ」に分けます。
小さい子はお母さんの目が届くリビングで遊ぶことが多いので、「よく遊ぶおもちゃ」はリビングの一角に簡単に戻せる場所をつくります。
おもちゃはカラフルなものが多く素材もまちまちなので、リビングのインテリアとの調和が気になる方もいらっしゃると思います。
そんな時は周りの家具に馴染むかごや棚を用意しましょう。
背の低いおもちゃラックは、子どもが成長して使わなくなった時に他の用途に使いづらいので、汎用性のあるかごと棚で十分です。
これから家を建てる方には、リビングクローゼットがおすすめです。
リビングに置いておきたい物を一括で収納できるクローゼットのことをこう呼びますが、子どものおもちゃ入れとしても活用できます。
下の棚を子ども専用にして引き戸にすると、遊んでいる時はおもちゃ側の扉を開けておけるので扉の開け閉めの手間が省けて便利です。
子ども専用コーナーは、お子さんの手の届く高さまでしか使いませんので、可動棚にして、置く物に合わせて棚板の高さを調整してください。
とは言え、子どものおもちゃは入れ替わるので、その度に調整するのも大変という方は、最初から下段は床から棚板までの間を40cmにして、キャスター付きのカゴを入れ、ブロック等の重いモノを入れとします。
目線より下にくる中段は浅いカゴを入れて引き出して使うように棚板の間隔を20cmにして、お絵かきした紙や折り紙など薄くて軽い物を入れます。
大きめのおもちゃがある場合は棚板間隔を30cmにしておくのもおすすめです。
棚やかごへ入れる物は、ブロック、リカちゃんセット、変身セット、知育玩具、絵本などグループ分けをしてください。
さらに、使う頻度ごとに収納場所を決めていきます。
「時々使うおもちゃ」は別の場所へ収納し、よく遊ぶ回数が増えたら収納場所を入れ替えます。
「遊ばないおもちゃ」は誰かに譲る、売る、処分するなど思い切って手放します。
親の関わり方で片付け好き・きれい好きな子になるの?
不思議なことに、持って産まれた性格なのか「片付け好き・きれい好き」な子どもがいます。
息子が幼稚園に通っていた時、同級生にいつも靴下を上までピタッとあげている男の子がいました。
その子が人形を片付ける時に向きをきちっとそろえていたので、その子のお母さんにどうやって片づけを教えたのか聞いてみると、「私は片付け好きじゃないけど、子どもはなぜかいつもキレイにしているから、きっとキレイ好きなのね」と言っていました。
教えたわけではなかったのです。28歳になったその子はインテリアとDIY好き男子に育っています。
一方、我が家の息子は片付けが不得手です。本人は「苦手というより好きじゃないし、片付いていなくても気にならない」と言います。これは私が気になってついつい手を出してしまったからだろうと反省しています(苦笑)。
よくお客様に「親が片付け下手だと子どもも片付け下手に育ちますか?」と質問されることがありますが、私の経験上、個人差があるとしか言えません。家中にモノが溢れた家で育っているお子さんの中には、それが嫌で自分の部屋はきれいにしているという子もいます。
「片付け嫌い」は一生変わらない?
低学年位までなら声掛けや環境づくりなど親の関わり方次第で片付け好きの子にすることはできると思いますが、思春期くらいになると、自分から片付けたいと思うきっかけが必要です。
子ども部屋のリフォームのときにお子さんと一緒に家具の配置やインテリアを考えたことで、自分の部屋を片付けるようになった中学生がいます。
一人暮らしをきっかけに部屋に関心をもった大学生や、主婦になってから生活を変えたいと奮起して整理収納アドバイザーの資格を取り、今では片付けを仕事にしている人もたくさんいます。
また、家を建てた際に収納をしっかり計画して戻し場所が決まってから夫が変わったといった話も聞きます。
今は片付け嫌いでも、諦める必要はありません。
きっかけさえあれば、誰でも片付いた部屋で暮らせるように変わりますので、家づくりやリフォームがきっかけになるよう、片付けが苦手な家族の目線で、楽に戻せる、片付けたくなる収納について考えてみましょう。