木材サプライチェーンの世界的“玉突き”余波が日本にも?
欧州連合(EU)は4月8日、ロシアに対する第5次経済制裁を採択し、ロシア産木材を事実上、輸入停止するとの措置を表明した。
ロシア産セメント、肥料、魚介類、酒類も含まれ、その総額は55億ユーロ(約7000億円)と推計されている。
カナダのシンクタンクFEAによると、フィンランド林産業への影響が大きく、同国における原材料木材の1/10を占めたロシア産木材が失われることで、バルト3国を筆頭に、原材料代替への動きが加速するだろうと指摘している。
4月9日の段階でロシアおよびベラルーシからの木材運搬トラック30台ほどが検問を通過できず引き返したという(FEA)。
余波は一見関係なさそうなベトナムにも出ている。
FEAはロシア産木材を中国で加工した針・広葉樹製材7万m3以上、単板20万m3の多くが失われる恐れがあると分析している。
こうした木材サプライチェーンの世界的な玉突き型波紋は今後、一層顕著に現れてくると考えられ、年間3000万m3強と世界最大の針葉樹製材輸出国であるロシアが木材貿易から締め出される影響は甚大だ。
FEAによると、中国はロシアから2021年、1300万m3の針葉樹製材、380万m3の針葉樹丸太を輸入しており、この数量の多くが失われるとなると中国は相当大掛かりな代替産地確保に動かざるを得ない。
ただし、ロシア通貨安を背景とした割安材が中国に大量に流入する可能性もある。
日本政府も新たな経済制裁
ちなみに中国は2021年、ドイツからの1200万m3弱を筆頭に、1600万m3の針葉樹丸太を欧州から輸入している。
これは中国の針葉樹丸太総輸入の30%以上を占めるものだ。
また、中国の欧州産針葉樹製材輸入は2021年、ウクライナの90万㎥強を筆頭に300万m3規模に上る。
今後、欧州産地も深刻な原材料不足に見舞われると考えられ、中国向け輸出余力がどの程度あるのか注目されるところだ。
EUと連動する格好で、4月8日、日本政府も新たな経済制裁の一環として、一部のロシア産木材の輸入停止方針を岸田総理が表明した。
すでに強固な金融制裁措置が発令されており、新規でロシアから木材製品を輸入することが極めて困難になっている。
※新建ハウジング記事より抜粋