耐震等級3の要《耐力壁・水平構面・基礎》 ”超”基礎知識

耐震等級3の要《耐力壁・水平構面・基礎》 ”超”基礎知識

ポイント1.耐力壁① 係数から壁量をイメージ

◉壁量計算は「存在壁量≧必要壁量」と確認する簡易計算法だ。
存在壁量は「実際に配置する耐力壁の量」、必要壁量は「地震力と風圧力に耐えるのに必要な耐力壁の量」を示す

◉地震力は床面積、風圧力には2方向の見付け面積で必要な壁量が決まる。
ここでは地震力に絞ってポイントを説明する

◉地震力に対する必要壁量の算出には係数を用いる。
床面積(m2)に係数を掛けた数字が必要な壁量(cm)となる。
この係数は軽い屋根と重い屋根で分けられ、建物の階数によっても変わる【下図】

◉係数は各階の必要壁量の比率でもある。
たとえば軽い屋根の2階建ての2階の必要耐力壁は1階の約半分。
1階よりも2階のほうが開放的な空間をつくりやすく、平屋はさらに開放的にできることが分かる【下図】

●図は地震力に対して必要な壁量の算出に用いる係数。
床面積(m2)にこの係数を掛けた数字が必要な壁量(cm)となる

●係数は各階に必要な壁量の比率でもある。
数字が少ない階ほど開放的な空間が可能になる

●建物は重量が重くなるほど地震力が増す(揺れやすくなる)ため、下階ほど係数が大きくなっている

 

ポイント2.耐力壁② 必要壁量は重さと高さで決まる

◉建物重量が増すほど揺れは大きくなる。
そのため2・3階建ては下階になるほど係数は大きくなる。
逆に平屋は係数が小さく、壁が少なくて済む。
平屋ブームは開放的なプランによるところも大きい
➡同様に建物高さが増すほど揺れは大きくなる。
同じ屋根荷重でも最上階の係数は階数が高いほど大きくなる

◉各階の壁量がイメージできると、3階建ての1階は壁がかなり多くなるからLDKは2階のほうがよいなどとプランの検討にも役立つ

◉耐震等級3の建物は壁量が増えることもあり、一般的には風圧力より地震力の必要壁量が多くなる。
例外なのが狭小敷地の3階建てのように細長い建物だ

◉この種の建物は床面積に対して風を受ける外壁面積が大きいので、耐震等級3であっても風圧力の必要壁量が勝る場合がある

◉なお、耐震等級2・3の検討に用いる許容応力度設計法では建物高さと重さから地震力を計算して必要な壁量を算出する。
簡易計算である壁量計算より実態に近い耐震性能が検証できる
➡耐震等級2・3では基礎や水平構面に関しても詳細に検討するほか、不安定な建物形状の安全性の検討も行う

 

ポイント3.耐力壁③ 重心と剛心はなるべく近づける

◉建物荷重の中心である重心と建物が地震などの水平力に抵抗する力の中心である剛心のあり方で耐震性能が変わってくる。
地震力は建物の重心に作用する。
一方で建物は剛心を中心に地震力に抵抗しようとする

◉重心から剛心が離れていると、建物を捻ろうとする大きな力が発生し、局部的な破壊が起こりやすくなる。
重心と剛心の離れ方を偏心率と言う概念で表す
➡偏心率が大きいほど前述した建物を捻(ねじ)ろうとする力が働き、搖れが大きくなる。
地震時に被害が発生しやすくなる[下図]

◉重心と剛心が一致している(偏心率0)場合、耐力壁に掛かる力は均等であり、重心を中心に建物の外周が均等に揺れる。
そのため重心と剛心はなるべく近いほうが地震に強い建物になる
➡重心と剛心の距離を「偏心率」という概念で表す。
偏心率は重心と剛心の距離が離れるほど大きくなる[下図]

◉建築基準法では偏心率0.3以下と定めている。
耐震性能を考えるとさらに小さい0.15以下が望ましいとされる。
許容応力度計算法では偏心率0.15を超える場合、ねじれ補正係数を掛けて壁量を割増する[下図]

ポイント4.耐力壁④ 耐力面材にはさまざまな仕様がある

◉最近は建物の外周に構造用合板をはじめとする耐力面材を用いるケースが一般化した。
面材で外周部を覆うことで気密性能が保持しやすくなるなど、耐震以外の面でも利点がある

◉さまざまな壁倍率の製品や仕様があるので、設計に合わせて選定する。
壁倍率以外にも価格や重さ(施工性)、防火性、耐水性、防蟻性、透湿性など製品ごとに特徴がある

◉個別認定を取得している仕様はN50以外の釘が使われたり、釘間隔が@150mmより詰まるように規定している場合もある。
標準仕様以外の耐力面材を用いる場合は注意が必要
➡図面上で分かりやすく注意喚起しつつ、施工前に大工に対して釘の仕様などについて口頭で伝えておくことも大事だ

 

ポイント5.耐力壁⑤ 耐震性能を左右する施工管理

◉面材耐力壁の耐震性能の保持には釘に関する施工管理が重要。
釘の打ち方(めり込みすぎなど)に問題がある現場もまだある。
また釘の打ち忘れ箇所が生じることも珍しくない
➡釘打ち機の連結釘が切れたなど作業を止めたときに打ち忘れが生じやすい

釘ピッチ100mmで施工するところを130mmで施工している(左)/入隅の耐力面材を留める受け材。
受け材の寸法とともに釘の仕様に注意(右)

◉間柱に対して釘を打ち損じる場合がある。
打った瞬間に大工は分かるのでその近くにもう1本打ってもらう。
繊維系の充填断熱の場合、間柱を外した釘が熱橋になるので抜くようにする

◉面材耐力壁の施工から透湿防水シートを躯体に巻くまでは時間の余裕がない。
巻いてしまうと釘の施工状況は確認できなくなる。
大工と緊密に連絡を取って進捗状況を把握しておく

 

※以上、新建ハウジング記事より抜粋

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